
すっかり日本でも王道の投資対象商品となった、S&P500指数。巷で年平均リターンが7%だの8%だのと聞きます。実際に2000年以降どうだったのか調べてみました。
- USDでの価格表示
- 月足チャート
- 年1月の初値と12月末の終値でリターン集計
- S&P500の配当は考慮しない
想定しているのは、毎年取引開始で成行注文をし、年末の最終日の取引終了時間ギリに売り注文を行い、S&P500へ投資することです。
基準価格100での10%リターンと基準価格1,000での10%だと、実質リターン10倍の差がついてしまう基準価格の複利に関しては、無視しています。また、納税による効率も無視し、あくまで単年度でのシミュレーションとなります。
もくじ
2000年からのS&P500チャート

ITバブル崩壊に9.11のテロ事件。イラク戦争と続き、実に3年もの間、S&P500指数も下落の一途をたどりました。見ての通り、2007年まで直近高値を戻すことはありませんでしたので、投資家としてはまさに受難の時期であると言えそうです。
実際には、1998年~2006年ぐらいの間に各種指数へ投資しても、リターンが芳しくなく債券投資とほとんど変わらないリターンであった為、価格が比較的安定している債券をポートフォリオへ組み入れる効果が、この時期において非常に高かったのも理解できます。
サブプライムショックにリーマンショックと投資家として、記憶に新しい事象です。戦争やテロからわずか数年。今度は、金融危機で何とも世の中とは理不尽な世界だと感じるには、十分な出来事でした。
2000年の下落相場を超える下落となり、直近高値より50%近く下落しました。今では、暗号資産をやっている方なら価値がゼロ、半分、3分の1など見ているので耐性が付いているかもしれませんが、当時の個別株でもない指数であるS&P500が半分になるとは、やはり相当に金銭的・精神的ダメージが大きいものだと思います。
自身は、この時期遊び(若気の至り)でFXのポンド円で、朝起きたらロスカットで一晩で数百万無くなりました。今でも思い出すと吐き気がします・・・。
2007年以降のS&P500で下落を無視
S&P500指数のチャートを再掲載します。

結論としては、2007年のショックを最後に、下落が1年以内に戻らなかったことが無くなりました。その後、14年間にわたり1年以上マイナスが続くことが無いのです。
S&P500においては、2000年や2007年のショックを元に「最大6年投資しても元に戻らない可能性があるから、それを踏まえて投資せよ」と言うのが多かった気がします。
投資の世界の「バックミラーは良く見える」と言う格言もありますし、今後は一切無いとは言えないと思います。少なくとも2009年以降にS&P500へ投資していれば、数カ月ホールドしていれば元に戻るので、安心してホールドできることもあり、多くの日本人投資家も買う流れになっているのだと思われます。
S&P500年別リターン一覧
こちらが2000年からの1月初値~12月終値で集計した、表ベースのS&P500年別リターンになります。2021年に関しては、直近の価格で算出していますので、この後いきなり上下しなければほぼほぼ数値的に参考にできる値です。

こちらは、S&P500年別リターンをグラフにしたものです。

過去20年のS&P500年別リターンを見ても、下落が極端です。落ちる時は、落ちる。2011年や2015年など年初と年末で運用リターンがほぼ変わらない年があります。ただ、S&P500のETFや投資信託で配当があります。概ね1%以上の配当があるので、実質2011年と2015年ももう少しリターンがよかったと言えそうです。
未来はどうなるか分かりません。また、下落の要因にもよるかと思いますが、やはり大暴落はバーゲンセールとしか考えられません。下落翌年のリターンを見ると25%以上で確率が100%です。
毎年続落するケースがあるので一概には言えませんが、大暴落があれば買う。と言う投資手法は、絶対リターン実現を考えると個人投資家であれば、出来なくもなさそうです。
仮に年5%リターンを実現したい。となった場合、暴落時に適当なところで仕込み、翌年は1年保有し年末に売ることで25%のリターンが得られる確率が100%の為、5年間(25%÷5年=年5%)は売買せずともリターンを確保できる計算になります。
但し、翌年もマイナスリターンだった場合は、もう1年待ち、場合によっては買い増しが必要に。
2019年からの3年間トータルリターンは、なんと90%!2019年にS&P500へ投資していれば、3年で90%増しに。2017年でも2018年でもダメで、2019年からのリターンが最強でした。
3年もかなりのリターンが出ているので、ここ1~2年で変調をきたしてもおかしくない。と言うことが年別リターンからもなんとなく感じられます(占いレベルで)。もっとも、2022年と2023年の年リターンが1%ぐらいで平均が下がるわけですが・・・。
なので、この恩恵を受けられた投資家は、一部を決済しインフレに対抗できる資産への振り替えが進むのもありますし、タックスロスセリングでの売りも12月は考慮できます。さらにインフレや利上げなどから、2022年は「概ね難しい相場」だと考える投資家が多いのも納得です。
イメージ的には、毎年初めに買って年末に売る。これを毎年繰り返している人は、年平均7%のリターンになります。20年間で減ってしまう年もあれば、増える年もありますが20年間S&P500に投資し、売買を毎年やっていくと年7%になります。
この中には、売買手数料や税金、配当が考慮されていませんが某証券会社のVOOなら、売買手数料無料なのでそれを使えば売買が無料。さらに税金に関しても、確定申告すれば赤字が繰り越せるのもあります。また、配当も年1%以上つくでの、毎年売買を繰り返すと言う悪条件でも、年7%はやはり優秀であると言えそうです。
S&P500年別リターン(中期投資)のケース
投資信託やETFの平均保有期間のデータを見たことがあります。意外にも3年程度となり、短いと感じました。とは言え、私も比較的これまで短期で売買してきたタイプなので、まったく違和感がありません。
最近、こうしてデータを見るのも3年以上保有しようと考え、個人的な検証をしているところです。
では、1年ごとに決済しリターンを測るのではなく、2年や3年、5年で売買するとどうなるかを計算してみました。各〇年リターンは、左軸の年に投資を開始し〇年経過する年末に売った時の年率換算リターンになります。トータルリターンを出す場合は、〇年×年率で求めることができます。

年リターン・・・毎年初めに買い。年末売り。
〇年リターン・・・年初買い。〇年後年末売り。
になります。やはり、中期で持つとリスクリターンがマイルドになりますね。
ただ、注目すべきは、大暴落の年度をどう挟むかにあります。大きいのは、2008年の大暴落。例えば、2004年に投資を開始した人が5年保有してもマイナスになるケースがあります。つまり、長期保有が前提であっても、1回の暴落タイミングによっては、トータルリターンすらマイナスになると言うことです。
かたや2009年に投資を始めた人は、5年平均21%です。5年で資産が2倍になったタイミングです。一概に言えませんが、世界から米国株への投資が進み2009年以降、5年持っていれば確実にリターンがある状態になっています。しかも、2年以上持っていれば必ずプラスリターンになります。
もちろん、このケースは一括投資であるので、一括投資をしたとしてもこのぐらいの損益と言うことになります。分割投資の場合は、これよりも損益幅が小さくなります。
1年で売買したとしても、2年保有しても、5年で売買しても期待リターンが7~8%で誤差の範囲内でした(計算上、そうなるのは当たり前ですが)。これを考えるとS&P500を買ったなら、利益が7%以上あればS&P500年別リターン計算上、統計を上回っていると言うことになります。
つまり、60歳や70歳、80歳ぐらいでS&P500の含み益が年率換算で8%以上あるのであれば、頃合いを見て決済してしまうのも1つの手かもしれません。逆に8%以下なのであれば、期待リターンまで上がるように持っておくのも良さそうです。
直近3年(2019年~2021年)のS&P500は、年率換算で23%です。これまでの8%リターンからかなり乖離しています。もし、年平均リターンに収束させるのであれば、-40%クラスの大暴落が必要になります。
歴史が変わって、年10~15%が平均リターンになりつつあるとしても、-20%ぐらいの大暴落が必要です。あくまで数字遊びですが、予想PERなども含めて色々割高な状況であるのは間違いなさそうです。
S&P500年別リターンのまとめ
過去20年間のS&P500年別リターンを見て、数字的に確実なことをまとめていきます。
- 過去20年間、1~5年の売買期間のリターン平均は何れも7~8%(配当除く)
- 大暴落翌年のリターンが20%以上である確率100%(大暴落時のみ投資してもよし)
- 2009年以降、2年以上保有すればプラスリターンである確率100%
2年投資すれば必ずプラスと言うのは、やはり資金を引き付けるデータの1つですね。
これが10年越しに崩れるとすれば、やはり台湾有事などの戦争。しかも、大きな戦争です。あとは、新しいパンデミックウィルス。
セクターの選別に始まり、個別株の検討をしてアクティブに個別株を探っていく時間が無い場合、やはり投資ポートフォリオのコアとして目をつぶってS&P500がシンプルで安心で楽ですね。手数料率も安く、意外に配当も1%以上あるのも良かったり。
今回、検証してみた結果、やはりS&P500はコアにしようと思いました。希望するリターンが年5%を目指しているので、S&P500はそれを優に超えています。配当も踏まえるとさらに安定するので、資産の3~4割ぐらいはS&P500に突っ込んでいきたいと思います。
まさに予想通りと言うわけではありませんが、大暴落中。年初来でS&P500は、4800→3850と20%のマイナスとなっています。今後、これ以上下げるのかレンジ相場となるのか全く分かりません。誰もウクライナで戦争が起きるとは思いませんでしたし。
インフレに戦争が拍車をかけて、凄まじいインフレに対する熱さまし代わりの利上げ。2008年に年初来マイナス44%を記録したこともありますので、ここからあとS&P500も20%下げてもおかしく無いかもしれません。
ただ、個人的には、指数に投資するのなら売却せず、適時買い増すのが王道かなと考えています。今後、数年に渡り指数も低迷を続けるかもしれません。が、過去20年のデータからも毎年度年初来リターンがマイナスになるのは、3年間のみ。
指数の投資は、15年ホールドすると100%プラスになるデータもあります。その間、毎年1.4%程度の配当もありますので、やはりS&P500を持つならまだホールドでしょうか。もし、アメリカ一強が崩れると想定すれば、一部売却し世界株に切り替えても良いかもしれません。世界株の投信やETFを買っても60%が米国株なので、いずれにせよ米国株の影響は強く出るわけですが、リスクがマイルドに。
グロース株が死に、バリュー株優勢となった今、次はまた何年後かに反転するわけで。これの振り子で個人投資家が落ちていくわけですね。右往左往して、往復ビンタで資金が無くなっていく。指数投資なら使おうとする5年前ぐらいから、売り時を探る感じですかね。
使う予定が5年以内に無いなら、S&P500への指数投資なら今はほんとホールド+買い増し。
●S&P500・NASDAQ100・ダウ30のすべてに含まれる銘柄を調べました

●NASDAQ100の年別リターンを調べました
