20年ぶりに国民健康保へ加入した時の出来事です。特に何も調べずに最後の法人を清算し、保有法人がゼロになりました。これをきっかけに国民健康保険へ切り替えました。
ところが、役所で渡されたパンフレットを見て驚愕!国民健康保険料ってめちゃめちゃ高いんですよ!!!!!ヤバい!
国民健康保険ってどちらかと言うと個人事業主・自営業の方やパート、アルバイト、無職などお金のない人が多いイメージでした。なので、その人たち向けだから保険料も安いだろうと思っていたのです。
が、蓋を開けたらとんでもない仕組みに。誰にとっても高いと感じる保険料でした。国民健康保険が特に高いと感じてしまう業種や特徴としては、専業個人投資家、専業不動産投資家などどちらかと言えば、FIREに適した人たちです。なぜ、そうなのか?解説していきます。
※文中「課税」と言う言葉を使いますが、保険料のことです
もくじ
国民健康保険料は、自治体で違う
まず、正確な国民健康保険料を算出する為に、自治体のホームページへアクセスする必要があるので、「国民健康保険料 自治体名」で検索しましょう。
東京であれば〇〇区までです。参考までに、本記事では東京都千代田区の保険料で解説していきます。
自治体で違うわけですが、ランキングでは全国1位の栃木県と最下位の沖縄県の特定の市区町村間では、国民健康保険料の差が約最低3万円ほど異なり、パーセンテージで40%も違うのです。
それが生涯続くわけですから、安いところに住民用を置いておくだけで、健康保険料が毎月3万円も違うわけですから年間36万円。10年で360万円と恐ろしい差が出てきます。
国民健康保険料の種類と区分
国民健康保険料の算出には、大きく分けて3つの種類があります。
医療分 | 後期高齢者支援金分 | 介護分 |
基礎賦課分 | 後期高齢者支援金等分 | 介護納付金分 |
医療分は、そのまま医療費として払われる分で納得度が高いものです。例えば、同じ年齢でも保険を使う人と使わない人がいて、使う人の為に払った分が消費されるような。そんなイメージ。
後期高齢者支援金は、高齢者向けの医療費を若い人も負担するようなイメージ。同じ年齢だとみんなジジババになってしまっていて、医療費がたくさんかかる。その世代の人だけでは無理だから、みんなから支援してもらう。そんな感じでしょうか。
介護分は、高齢者だけでなく障がい者や痴呆など、年齢に関係なく介護費用としてみんなで負担する印象。但し、40歳~64歳の方のみ発生します。
これら3つの種類の保険料のトータルが国民保険料となります。
所得割額・・・加入者の収入・所得に応じて変動する計算区分
均等割額・・・加入者であれば最低払わなければいけない計算区分
国民健康保険料の算出は、この2つの計算区分から成り立っており、収入ゼロであれば実際には免除や減額制度があるものの、必ず発生する均等割額と所得に応じて計算する所得割額の2つがあります。
実際の高額な国民健康保険料
医療分 | 後期高齢者支援金分 | 介護分 |
所得割額 (全員の算定基礎額×7.30%) + 均等割額 (加入者数×37,800円) | 所得割額 (全員の算定基礎額×1.98%) + 均等割額 (加入者数×11,500円) | 所得割額 (対象者の算定基礎額×1.22%) + 均等割額 (加入者数×16,100円) |
これは年額計算になります。例えば、5人家族で夫婦2名+子供3名だと均等割額×5名がベース。但し、子供の場合は、減額があったり自治体によっては、高校まで無償とするなど様々です。
均等割額は、どうしても発生してしまいますが、年額なので月換算すると40歳未満の大人なら月額4,108円となります。40歳~64歳であれば、月額5,450円が均等割額の国民健康保険料分となります。
ここまでであれば、無職だったとしても月額5,450円で健康保険に入れて、3割負担で医療が受けられるので世界的に見ても安い部類に入るのではないでしょうか?ここまでは、まあ理解できます。
国民健康保険料の計算も金額も。問題は、所得割額です。
実際に3種類全てのパーセンテージを合算すると10.5%です。ん?社会保険なら労使折半で9%か10%か、確かその辺だったよな。と思いますよね?10%か。まあ、それならと。
家族がいるのか単身なのかで見方が変わりますが、家族であれば世帯収入になります。
国民健康保険料は、全収入に対して課税
さて、タイトルに「個人投資家」と入れたり「FIRE」と入れましたが、国民健康保険料最大のポイントは、課税対象が「全利益(総所得)」なのです。
事業や利子、給与、配当、不動産、雑所得や一時所得、山林所得、退職所得などの合計。さらに土地や家の売却益などのほぼ全ての所得。
株式トレードの投資家で年1,000万益出ししたら、この金額に対して10%国民健康保険料がかかります。また、FXであっても、暗号資産であっても、ETFでも投資信託でも利息でも利子でも全ての投資の利益。つまり、確定申告している限り全ての収入に対して、保険料がかかるのです!!!!!
あり得ない
コロナで流行ったFIREもFIREした瞬間に高額の国民健康保険料に悩まされるでしょう。投資利益に対して、20%の所得税と住民税がかかり、さらに収入の国民健康保険料10%が加算され、投資利益の0円~10,000,000円まで税率が30%になるに等しいのです(保険料控除は確定申告で使える)。
つまり、会社員や会社役員から専業トレーダーや専業個人投資家になったり、FIREしたり、自営業になった場合、単純に収益に対して10%増税されるのとほぼ同義になります。
なぜなら、社会保険に加入していれば、個人の投資の利益は20%で済んでいたからです。
こちらも同じ投資家ですが不動産投資であれば、副業だったとしても確定申告して経費や収益を計上し、税金を納めていると思います。こちらは、単純に不動産所得で5%~23%まで差がありますが、さらに国民健康保険料として10%加算されるのと同じことになるわけです。
不動産で10%増税されたらリターンってめっちゃ影響出ますよね。基本的には、数%のリターンの積み重ね。そのうち10%増税されたら1%ぐらいリターンが下がるのではないでしょうか。
兼業大家が社会保険を捨て、自営業になるケースでも家賃所得に対して10%増税となります。
なぜ、こんな制度になっているのか?基本的には、専業投資家が絶滅危惧種であり、声が小さいこと。業界団体もなければ、一般的には「儲かってるんでしょ?」「楽に稼いでいるんでしょ?」と見られますし、職業としては「労働」でもありませんので、対処する必要も無い状態。
しかも、年々均等割額が増えており、低所得者ほど国民健康保険料負担率が増加する傾向にあります。
では、抜け道は何か無いのでしょうか?利益に対して10%も保険料がかかったのでは、個人投資家としてはたまったものではありません。
高額な保険料を低減させる方法
調べてみると最近、税制か法令が変わったようで是正されていました。
保険料算定に組み込まれないように、証券会社の特定口座で源泉徴収してもらう方法です。例えば、A証券会社を特定口座で使っており、源泉徴収ありの場合、A証券会社で受け取った株式売買益、先物売買益、利子、配当は、全て源泉徴収されるので確定申告不要です。
こうすれば保険料算定には、投資の金額が含まれなくなり10%保険料課税されることもなくなります。でも、この抜け道を利用するには、いくつかデメリットがあります。
- A証券会社が+100万円。B証券会社が-20万円。C証券会社が-30万円。この場合、確定申告をすれば証券会社同士の分を損益通算できますが、そうすると+50万円が保険料算出収入となります。
- 初年度A証券で-300万円。2年目に+500万円。この場合、毎年確定申告していれば、昔のマイナスと今回のプラスが相殺され、2年前課税対象が+200万円になりますが、申告してしまうと+500万円が保険料算出収入となります。
- 源泉徴収ありだと年間1,000万利益が出た場合、最大200万円が益出し時に引かれ、200万円に対する機会ロスが発生します。
個人的には、源泉徴収ありにすると資金効率が悪くなるので、源泉徴収なしで運用していました。なので毎年、確定申告していました。毎年の利益が1億ある人なら源泉徴収ありを選択すると2,000万円が即なくなり、もはや無視できない金額です。
年初に1億利確。その時点で源泉徴収なしであれば、1億入ってきますが源泉徴収ありだと8,000万しか入ってきませんので、大きな違いです。ただ、利益が大きければ国民健康保険10%も気にする必要は無いかもしれませんが。
国民健康保険の最大納付額
社会保険と同じで上限が設定されてあります。年間で102万円(40歳~64歳)です。40歳未満の場合は、85万円です。毎年上がっているので、インフレ率分で考えると毎年1万円はあがるかもしれませんね。
つまり、個人投資家で年間所得が1,000万であれば、そのまま保険料率10%。年間所得2,000万円であれば実質保険料率が5%まで下がってきます。
しかしながら、年間所得2,000万以上をキープできる個人投資家って本当に少ないと思います。それに社会保険に加入していれば、社会保険対象収入がいくらだろうが、投資の収益に対して所得税住民税以外かからないので、そもそも気にする必要もありません。
う~ん。特定口座で源泉徴収ありにして、損益通算なしで確定申告せずにいくって結構難しい。そんなコントロールできないですよね。
そうなるとファミリーオフィスではありませんが、資産管理会社と言うか節税会社と言うかペーパーカンパニーと言うか。法人をもって社会保険に入る方法がいいのか。
国民健康保険料節約の為に法人設立はありか?
法的な観点は検証する際においておきますが、個人投資家の年間所得って均一ではなく、結構ブレがあると思います。それこそ配当だけで食べられる人、FIREな人は、一定かもしれませんので計算が楽です。
国民健康保険料は最大でも102万円。所得500万で単身で50万円です。夫婦がいたり、子供がいるともちろん上がりますので、所得500万円の人の国民健康保険料50万円をラインに考えてみます。
節税用法人を作る際の初年度費用を考えます。
- 法人設立費用一式・・・25万円(印鑑、登記代、代行費用等)
- バーチャルオフィス・・・月5,000円×12カ月=6万円
- 交通費・・・1万円
- 法人税均等割・・・7万円
最低額で行くのであれば、上記のみかと。1年目で合計40万円近くかかります。さらに役員報酬を社会保険料と同額程度にし、厚生年金の費用と健康保険の費用を最低ラインにしておきます。
2022年現在の最低ラインが月額12,000円になります。労使折半で会社負担も同額なので、実質月額24,000円の負担で保険料を賄うことができます。
そう考えると社会保険料の負担が年間288,000円となり、法人設立初年度の費用と合算すると688,000円になります。
初年度ベースで見るともう少し雑費がかかるかもしれませんし、労務手続きと経理、決算をどうするのかでも変わってきますが個人投資家なら調べても出来るし、手間であれば顧問料払って丸投げでもよいです。
不動産所得で言えば年500万って結構普通にあると思いますし、不動産投資家こそ法人のほうが便利ですよね。
次年度以降だと法人設立費用の25万円が無くなるので、顧問料なしで年額43万円がミニマムラインになってきます。さらに自宅で登記すれば、実質7万円の税金だけで維持できるので法人維持コスト含め36万円で保険に加入できます。
国民健康保険料の10%を回避する為に、壮大なシミュレーションになってきましたが、不動産投資家なら迷わず法人もったほうが良さそうな気がしますね。健康保険料観点からのみ見れば。
では、個人投資家はどうでしょうか?そもそも、法人に資本金1,000万円を超えない範囲で出資し、それで増やせばいいですよね?
法人でも投資の収益には、税金がかかりますが役員報酬と各種経費、社会保険料も全部経費。つまり、非課税で支払えるので年間で60万円のみ益出しすれば、実質税負担ゼロで社会保険を賄うことができます。
例えば、年配当500万円でFIREする人であっても、そのうち100万円配当を受けられる金融商品を出資して、法人で受け取ればほぼ非課税分の納付で健康保険料が払えます。これが個人であれば、税引き後のお金からさらに国民健康保険料を納付するので、負担が大きくなります。
赤字法人を維持出来ればよいので、益出しをギリギリで考えると年額70万円。一般投資家に人気のアライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型だと、配当6%計算で1,200万円分買っておけば、まあ大丈夫かなと言った感じですね。
もしくは、S&P500を3,000万円分ぐらい買っておけば、配当1%で年30万円ぐらい。キャピタルゲインで年度調整でいけそうです。
結論:投資家・大家・FIRE人は、国民健康保険に入るな
予算次第ですが総利益に対して10%(最大102万円)なので、確定申告時に控除され税金はかからないとしても、保険料だけで年額102万円は高い。
社会保険で最低額の役員報酬であれば、実質負担288,000円で年間総利益300万円の人の国民健康保険料と同じレベルになります。もちろん、均等割の法人住民税や手間がかかります。
ただ、国民健康保険料のみで比較してもこのぐらい差が出てくるので、仮に法人の節税スキームを利用するとなれば、セーフティ共済や小規模企業共済なども使えますし、経費が使えるようになるのでそれ以上のメリットがあるのは間違いありません。
専業個人投資家ならば、国民健康保険料の観点からも法人を1つは持っておくのがベストです。そして、最後にダメ押しの1要素。
国民健康保険に加入すると言うことは、国民年金月額16,500円にも加入することになります。国民年金だけで年額198,000円です。国民健康保険が年所得500万円で年額50万円の健康保険料だったとしても、合わせて年70万円になります!!!!!
もちろん、年金のシミュレーションはしません。投資のほうが普通に運用する限りリターンが良いからです(世代間格差で年金の払い損が発生する為)。
社会保険料288,800円なのか国民年金・保険料で698,000円なのか。年所得500万レベルでこの差。差額40万円分を法人運用費用に充てるとトントンになりますが、自分でやって赤字法人7万円の税金だけ払えば手取りが年30万円近く増えます。
顧問料など手間賃払ってもトントンです。合う合わないはあると思いますが、合理的に考えてやはり法人1つあってもよいと思います。